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「授業にカメラ」ぜひ 知性だけじゃない、心豊かな子供を

●「写真は絵」、「あこがれ」醸成も
●行政や学校…実現へ総力挙げ
「情報と感性」―情緒教育に写真を―
  パネルディスカッション

「子供たちの情緒を豊かにするために学校の授業でもっとカメラの活用を」と、APA(社団法人・日本広告写真家協会)は訴えている。教育に写真を取り入れるメリットは何なのか、そのためには学校現場や国は何をしなくてはいけないのだろうか。今月10日、東京都写真美術館で「『情報と感性』−情緒教育に写真を−」とのパネルディスカッションが開かれ、カメラが趣味で文相も経験した与謝野馨前内閣官房長官▽全国造形教育運盟の永関和雄委員長▽APAの鈴木英雄理事が話し合った。(司会は毎日新聞の玉木研二論説委員)

――この会の意義について主催者の鈴木さんから口火を。

鈴木英雄氏 学校の美術の授業で絵を描く、粘土彫刻をするというのはものすごく大事だとは思いますが、今一番子供たちに求められているのは、何かを見て、何かを感じ、そして発信する「発見・即・表現」ということだと思います。だから子供たちに感じたものを発信させてあげたい、それには写真が一番向いているということを声を大にして言いたいですね。

永関和雄氏 全国造形教育連盟は幼稚園から大学までの美術教育に携わる先生方の全国組織です。写真による美術表現をやってみようと半年前に鈴木さんからお話があって、小・中学校の計3校で取り上げたわけです。その意義を私は二つ考えています。一つは美術表現の苦手意識からの解放です。絵を描くのは本来楽しいのですが、中学、高校になると苦手意識を持つ子供が出てくる。写真は同じ方向に向けてシャッターを押せば、だいたい同じものが写る。どこを切り取るかといったその人なりのアイデアを写真という技術で実現できるわけです。二つ目は生涯学習です。生涯を通して楽しむ。それがデジタルカメラの普及で簡単にできるようになった。

与謝野馨氏 「これは美しいものだ」と認識することは大事ですが、絵だと上手、下手がある。写真の場合は思い通りの作品が撮れる可能性が高いので、美的感覚を磨き、白己表現につながる。さらにデジタルカメラはフィルムを惜しむ必要がないので、写真表現を深められる時代にもなった。読み書きそろばんだけでは、白分の世界が広がらず、心豊かな人間はできない。美しいもの、確かなものを自分の目で確認する写真は教育の中で大きな存在となるでしょう。

――教育現場で写真の活用を定着させるには、先生の研修をいかにするか、機材であるカメラをどう確保するかという二つの課題に突き当たりますね。

鈴木氏 写真は現像やプリントがうまくいった時の感動も楽しさの一つですが、デジタルの時代になり、教育として広く普及するには、初めは感覚や感性から写真に入ってもらいたい。また「写真は分からない」という美術の先生もいますが、写真を絵と思えばいいわけです。機材は各学校に1クラス分あればいいのですが、何校かで共同で持つことも可能です。記録の道具から「表現」としての写真、「あこがれ」になる写真の世界、写真文化向上のカギがそこにあるような気がします。

永関氏 確かに、写真は美術じゃないという意識の先生もいます。「あれは誰にでも撮れるんだ」と。写真は美術表現であることを理解してもらう研修を行い、実際に子供を指導できる力をつけていくことも必要でしょう。ハード面では、パソコンが小中学校にかなり配備されています。デジタルカメラがあれば写真を撮って、パソコンの画面でビジユアル的に楽しみながら美と向き合うことができます。

――90年代以降、国際社会で通じる自己表現のできる人材を育てなければいけないと教育界や経済界では盛んにいわれてきました。子供たちが写真で自己表現するという考え方についていかがですか

与謝野氏 アニメに対する訂価を見ると、日本人の感性は国際的に通用しています。日本人が写真を通してものごとを表現することにも私は自信を持っています。ただ、自己表現に優れた人間をつくるには、自分で美しいものを見つけ、それを表現するにはどうするかを自分で考え、努力する。やはり、そういうことをきちんとできるようにする教育が大事です。それと写真では、対象物に対して共感や情愛を持つことが必要です。写真を撮る過程で、「この人を美しく撮ろう」という、優しさが養われるのではないですか。写真にはそういう教育的効果もあると思います。

――写真を便う授業はこれまでなかったのですが、飽きる子はいないのですか。

鈴木氏 30枚ぐらいはすぐに撮ってしまうので、「勝負はそこからですよ」と先生に言うんです。「よく考えなさい、形や光、影を見なさい」というような教え方をすると、子供はそこからもう一歩入ってきて、お互い研究するようになりますから、飽きることをいかに乗り越えるかも一つのテーマです。

永関氏 子供たちが進んでやるようにするのが教師の一番の仕事ですね。楽しさが分かるとあとは放っておいてもやりますよ。

――「あこがれを植え付ける」といった取り組みも必要なのでは?

鈴木氏 まさにそこです。我々も若いころに、先輩たちの作品にあこがれてこの世界に入ったんです。子供たちの あこがれを本当に育てたい。それが優秀な人材育成につながることになる。

与謝野氏 私が初めて写真のプロを見たのは小学生の時です。(日本を代表する写真家の)木村伊兵衛さん(1901〜74)が家に来られて父と母の写真を撮られたんです。父親が外務省に勤めていたので中学3年の時に海外に行きました。エジプトに木村先生が来られて「馨君、写真を撮っているのなら見せなさい」と言うので、私の写真をお見せしたことがあるんです。今でもそれがちょっと自慢です。

――最後に一言ずつのまとめを。

永関氏 人の能力の中には知的な部分と感性の部分がバランスよくあることが大事だと思うのですが、感性がどんどん低くなってきていると感じます。写真を通して子供たちが感性で自分を見つめたり、発表したりする教育をしていくことがこれからの日本を救っていく、そういう意味で写真教育と学校とのコラボレートをさらに発展させていきたい。

与謝野氏 こういう話をうかがうと、職業病で、文部科学省の人たちの考えをこれに合うように変えるにはどうしたらいいかとか、お金はどのくらいかかるのかなどとつい考えてしまう。人、もの、お金、考え方…。私もできるだけのお手伝いはやっていきたいと思います(拍手)。

鈴木氏 小中学校の生徒は全国で1075万人います。今日の話を受けてAPAはもちろん、他の写真家団体、写真部の先生、さらにハイアマチュアの方々の力を合わせ、総力で写真を子供たちに教えることはできないだろうか、という気持ちです。

平成20年3月16日(日)毎日新聞関東版
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