日銀総裁人事や暫定税率で福田政権が迷走するなか、自民党内では早くも「ポスト福田」をめぐる動きが目まぐるしくなってきた。麻生太郎前幹事長が誰と組んでどう動くかが目下のところは最大の焦点だ。論客2人が内幕に鋭く切り込んだ。
歳川隆雄福田康夫首相が「脳死状態」になりつつあります。ガソリン税の暫定税率問題でも、日銀総裁人事でも、福田さんか何を考えているのか見えず、官邸の主としてのりーダーシップをまったく発揮していない。官邸と自民党執行部との連係プレーも働かない。安倍内閣は「お友達内閣」と揶揄されましたが、安倍内閣以上に段取りが出来ない悲惨な状態です。
宮崎哲弥まったく同感。森喜朗元首相などの助力なしには組閣もできない「お友達いない内閣」ですもん(笑い)。福田首相は3月27日に緊急記者会見を開いて、道路特定財源の一般財源化などを打ち出しました。中身は基本的に、正しかったと思います。しかし、党内への事前の根回しはなかったし、小泉純一郎元首相のように「解散・総選挙に打って出るぞ」と脅して従わせる覚悟もない。世論の圧倒的な支持があるわけでもない。にもかかわらず、独断専行でああいう会見をした。減税なしの一般財源化は財務省色が非常に強い政策です。福田さんが財務官僚の振り付けで動かされていることが完全にバレてしまった。あの記者会見でついに「最後の一葉」が落ち、福田政権が終わったのを確信しましたよ。(笑い)
歳川日銀総裁人事でも、自民党の最高幹部の一人は、元大蔵事務次官の田波耕治氏を提示すると聞いて、「いすからころげ落ちるほど仰天した」と言っていました。福田さんは、自分自身のイニシアチブで決めたことをアピールしたかったんでしょうが、あまりにもむちゃでしたね。
宮崎信じ難いことですが、福田さんは自民党道路族や国交省にとって道路特定財源がどれほどヴァイタル(死活的)なものなのかをご存知なかったんですよ。知っていれば、あれほど簡単に一般財源化なんて言えるわけがない。まだ人気があったころの安倍政権ですら、そこに手を突っ込もうとして猛反発を食らい、余剰分の一般財源化を閣議決定しただけでお茶を濁したんですから。これほど党内情勢に無頓着でいられるんだから、独力の内閣改造なんてできっこありません。
歳川福田さんという政治家を考えるときに、いちばん重要なキーワードは「旧大蔵省DNA」でしょう。父親の赳夫元首相は55年体制下の第1号で、福田邸には大蔵官僚が毎日出入りしていた。そういう環境で育った福田さんは、官僚出身でないにもかかわらず、DNAが強烈にインプットされてしまった。道路特定財源に関する「新提案」でも、暫定税率を廃止して2兆6千億円の財政赤字を生むことは容認できないとあっさり断言した。これは福田さんの宿痾じゃないですか。
宮崎福田さんは「民主党が何を考えているかわからない」とよく言いますが、民主党側からすれば、官邸が何を考えているのかわからない。町村信孝官房長官と伊吹文明幹事長がまったく機能していないので、民主党は交渉窓口がなくて困っているんです。
歳川福田政権を見ると、首相だけでなく町村官房長官も伊吹幹事長も2人の官房副長官も、国会対策を指揮した経験がない。古賀誠選対委員長と二階俊博総務会長は経験豊富だけれど、道路族のトップでもあるから、暫定税率の廃止問題で野党対策に乗り出すわけもない。
宮崎古賀さんや二階さんも、今の民主党執行部にはほとんど人脈をもっていませんしね。問題は4月末から5月中旬にかけてです。4月27日には衆院山口2区補選があります。2日後の29日には、暫定税率の復活を含む税制改正関連法案を衆院で再議決できる時期が来る。与党が補選で負けたら再議決はできず、福田首相の責任間題が追及されることになります。もし補選で勝って再議決で暫定税率を復活させた場合でも、福田内閣が総辞職に追い込まれる可能性は高い。自ら辞めないと、野党側が参院で首相の問責決議をし、国会は完全に空転する。7月の北海道洞爺湖サミット後に総辞職という「サミット花道論」も囁かれてきましたが、ガソリンを値上げしたら世論の袋だたきにあって、そこまでもちませんよ。
歳川世論次第では、与党が補選で勝っても、ガソリン値上げの再議決ができなくなる場合もあるでしょう。ただ、福田さんは安倍晋三前首相に匹敵する「KY(空気が読めない)」だから、総辞職という選択肢はない気がするなあ。(笑い)
町村派の狙いは小池官房長官!?
宮崎サミットの議長をやりたいでしょうしね。ただし、関門は4月29日だけではありません。4月15日には「後期高齢者医療制度」による年金天引きが始まる。民主党はここで、「ガソリン国会」に加え「医療国会」の戦端を開くハラです。また5月6日には中国の胡錦濤国家主席が来日しますが、チベット情勢次第では、これも福田さんにとってはマイナスになる恐れがある。5月12日には、特定財源の10年維持を定めた道路整備費財源特例法改正案の再議決が必要になる。福田政権は長く続いてサミットまで。それより前に引きずり下ろされてしまう可能性も高いと思いますよ。
歳川自民党内ではこれまで水面下でさまざまな動きがありましたが、最近それが表に出始めました。ポイントはやはり最大派閥・町村派の動きでしょう。町村派は森さん以来、4代続けて首相を出してきましたが、次の総裁選には適当な候補者がいない。最有力候補の麻生太郎前幹事長にどう対応するかが問題です。町村派としては、首相ポストが無理なら、官房機密費を牛耳れる官房長官ポストが欲しい。中川秀直元幹事長と小池百合子元環境相を中心に京都議定書目標達成議連ができました。中川さんは、麻生政権誕生を前提に、小池さんを官房長官にしたいんじゃないですかね。
宮崎麻生さんがそれを受け入れるかどうかはわかりませんけどね。なかなか人の言うことを聞かない人だから。(笑い)
歳川4月1日の朝日新聞に森さんのインタビューが掲載されました。森さんは「とにかくサミットを成功させ、それ以降のことは、またその時考えればよい」と語っている。これを読んだ自民党議員たちは、「福田首相はサミット後に退陣するから、それを前抵に動いていい、というお墨付きを与えた」と受け止めている。ポスト福田に向けた新しい多数派工作がすでに始まったんです。
宮崎誰がポスト福田になるにせよ、福田さんが道路特定財源の全額一般財源化を事実上公約してしまった以上、次の首相は道路特定財源に手を突っ込まないわけにはいきません。そうすると、党内の道路族とぶつかることになる。古賀さんや二階さん、青木幹雄・前参院議員会長といった道路族のボスたちからすれば、次の首相には、「選挙の顔」になれて、自分たちがコントロールできる人がいちばん望ましい。参院議員の舛添要一厚労相でも構わないという意見さえあります。しかしさっき言った「医療国会」の成り行き次第では舛添さんの脈は途絶えてしまうかもしれない。
歳川同じ流れで、石原伸晃・元国交相起用説もありますね。逆に言えば、麻生政権が誕生するかどうかは、麻生さんと道路族との折り合いがつくかどうかにかかっている。麻生さんが道路特定財源についてどう判断するか。道路族をのみ込むだけの器量があるか。そこがポイントです。
政局を左右する与謝野氏の動向
宮崎今、麻生さんは完全に雌伏しています。道路特定財源についてもいっさい発言していない。「ここで下手なことを言うとまずい」という意識が働いているんでしょうね。
歳川麻生さんの政権取りにとって、安倍さんが町村派に戻ったことも大きい。安倍さんは次の総裁選で麻生さんを担ぐでしょうが、そのとき町村派を麻生支持でどれぐらいまとめられるか。森さんや中川秀直さんはどう反応するか。安倍さんが派閥に戻るときに、次の総裁選は麻生支持で動くという条件をつけ、森さんがそれを容認したという説もありますからね。
宮崎麻生さんと安倍さん、中川昭一元政調会長は、イデオロギー的な同志として派閥横断的にグループを広げている。安倍さんがその中核にいるのは間違いない。彼は、道路特定財源は一般財源化するしかないという強い意思をもっている。麻生さんの政策形成にも影響を与えると思いますよ。
歳川もう1人のキーパーソンは与謝野馨前官房長官ですね。麻生さんと連携するのか。それとも青木さんや古賀さんたちに担がれて神輿に乗るのか。
宮崎与謝野さんはある意味で福田さん以上に財務省な財政思想を取る人ですから、道路族の古賀さんたちに担がれるとは考えにくい。麻生さんを差し置いて自らが手を挙げるタイプで
もない。むしろ、麻生さんと2人でコンビを組んで政権運営に当たるほうが自然でしょう。
歳川2人はイデオロギー的には異なる部分があるけど、同期で、波長が合う。それに、2人とも亡くなった竹下登元首相の勉強会のメンバーだった。
宮崎お互いの欠けた部分をうまく補完し合える、いいコンビになりますよ。
歳川コンビが結成されれば、与謝野さんが、麻生さんと古賀さん、青木さんたちとの接着剤になるでしょう。
宮崎ただ、そこでいったん折り合いがついたとしても、新政権が安泰で長持ちするかどうかはわかりません。総選挙の結果、民主党政権が誕生する可能性もあります。与党が勝っても、3分の2に及ばず、衆院で再議決ができなくなる事態に陥れば何らかの形で野党と連立するしかなくなる。そのときに、自民党総裁が首相でいられるかどうかは、はなはだ怪しい。ポスト福
田で政権に就いても、「三日天下」で終わる恐れもあるんですよ。
歳川麻生政権になった場合は、公明党・創価学会が、麻生さんとの距離感をどう考えるか、という問題もありますしね。
宮崎福田さんが一般財源化を約束した以上、年末に策定する税制改正大綱をめぐって、ものすごい攻防戦が起きるでしょう。それを乗り切るには、誰が首相になっても、10月か11月には総選挙をし、そこで勝って求心力を高めるしかない。まず年内の衆院解散・総選挙の実施は確定しました。
歳川さらに踏み込めば、「麻生政権のもとでの今秋解散へ!」ということでしょうね。(笑い)
宮崎それも「碓定」でいいんじゃないですか。(笑い)
週刊朝日:平成20年4月18日号
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