米国発のサブプライムローンによる混乱が巻き起こる今、「ねじれ」状況にある日本政治は有効な手を打てていない。
そんな中、薬害肝炎問題や「つなぎ法案」への対処でも福田首相を動かしたと言われる"キーマン"与謝野氏に、
田原氏が迫る。
日本経済に「自虐的」になるな
田原政治の前に、まず経済からお伺いしたいと思います。サブプライムローン問題の影響が拡大していますね。先行きについて与謝野さんはどう見ていますか?
与謝野日本の金融機関だけとって見れば、たとえサブプライム関連が「全損」になったとしても1兆5000億円弱。白己資本の総額は40兆円近くありますから、「かすり傷」と言っていい。問題は、1つの金融機関だけで3兆円に及ぶような巨額の損失を抱えてしまった欧米の状況を受けて、世界的に
金融システムヘの不安が広がったことですね。すぐに修復するのは難しいかもしれません。
田原おっしゃるように、日本は比較的傷が浅かったはずなのですが、この間の株価の下落率は欧米よりも高くなっている。
これはなぜですか?
与謝野
理由は主に2つあると思います。1つは、最近の東京市場では、外国人投資家による売買が6割近くを占めていた。旺盛な買いを入れていたのは、外国人なんですね。ところが、サブプライム問題で彼らの資金繰りが苦しくなってしまった。それで利益の出るうちに売っておこうと、日本株をドルに換える傾向が強まったのではないでしょうか。もう1つは、何だかんだ言って、日本経済は「いざなぎ超え」と称されるような、緩やかながらも長期の好景気が続いて
きました。景気循環の観点から、さすがに折り返し点が近いのではないか、という見方が台頭したことも考えられます。
田原外国人が「日本売り」を始めたという人も多いのですが。
与謝野
私は、そういう自虐的な見方はしていません。あくまでも彼らの一時的な都合で資金移動を行っただけでしょう。
福田内閣になって改革がストップしたから株価が下がったなんて言う人もいますが、まったくナンセンスです。
田原でも小泉さんの時代も、安倍さんの時も株価は上がりましたよね。
与謝野小泉政権時代に外国人が買ったのは、日本株が他に比べて明らかに割安だったからですよ。彼らは、日本の投資家が
「オール自信喪失」で買いを手控えていた時期に安値で日本の株を拾い、今は自分の台所事情を勘案して売りに出して
いるのです。いずれにしても、「外国人に見放されたからダメだ」ではなく、そうなっても大丈夫なマーケットに育てなければ
ならないのであって、「日本売り」云々を嘆いても仕方がないですよ。
田原
大田弘子経済財政担当大臣が通常国会で、「もはや日本は『経済は一流』ではない」と演説して話題になりまた。
2006年には世界の総所得に占める日本の割合が10%を割り、1人あたりのGDP(国内総生産)が、OECD(経済協力開発機構)加盟国で18位に低迷したと。これも「自虐的」ですか?
与謝野まず言いたいのは、政治家の発言として落第だということ。政治家はアナリストじゃないんです。状況を解説するだけ
ではダメで、国民にメッセージを発信して、元気を出してもらわなければいけない。発言の中身も問題です。例えば中国やインドが経済成長した結果、日本のシェアが落ちるのは当たり前でしょう。むしろ、日本経済にとって今や米国と肩を並べる存在であるアジアのパートナーには、大いに繋栄してもらわなければ困るんです。
田原ただ、先進国の中でも順位が落ちている。
与謝野はっきりしているのは、日本の所得が減少しているわけではないということです。特にヨーロッパ諸国との比較に
おいては、ここ7,8年の間にユー口が円に対して5割方値上がりしていることも考慮しないと。
田原為替要因で、日本の見かけの数字が相対的に下がっているだけだと。
与謝野そう。決して豊かさのレベルが低下したわけではないのです。数字は参考にはなるけれど、それで一喜一憂する必要は
ありません。
中央公論 平成20年4月号
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