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与謝野馨に「小沢との新大連立」を質す

「ねじれ国会」で意思決定機関に大きな枷をつけられた格好の福田内閣。その支持率は、とうとう20%を割り込んだ。自民党が迎えたこの有事を、ポスト福田最有力候補に挙がる男はどう見るのか。かねてから浮上する小沢民主との大連立は再び俎上に上がるのか。また、自身が宰相となった日のビジョンは━。政界キーマンを作家・大下英治が独占直撃する。

国民に幻想を持たせるのは…

大下自民党内で「ポスト福田」の呼び声が上がる与謝野馨前官房長官は、この4月に初の著書「堂々たる政治」(新潮新書)を上梓、さらに注目を集めている。

与謝野は著書の中で、自民党の中川秀直元幹事長らが主張する「上げ潮路線」を「耳に心地よいことばかりいって、国民に幻想をもたらすのは良くない。本当のことを訴えるひとが自民党にいることが大事だ」と批判。消費税を10%に上げる必要性を強調している。これに対し中川は、経済成長による増収で増税を回避すべきだと主張。4月29日の街頭演説では「秋以降に経済成長重視派と財政再建派の戦いが始まる気がする」とまで語っている。

与謝野中川さんとは、あまり角を突き合わせてという感じではありません。そもそも、私や柳沢(伯夫)さんが、「元祖上げ潮派」だったんですよ。ただし、われわれの主張は、「財政再建と成長力の強化は、車の両輪。財政再建をやる時は成長政策を一緒にやろう」というものでした。ですから、成長政策に手を付けることに対しては、何の異論もないわけです。

大下ただし、2つの問題があるという。

1つは、「成長政策といっても、インフレ率を乗せた見かけの成長率でいいのか」ということ。

与謝野インフレを国民に押し付けて財政再建をやるのは正しくないと思います。実質的な成長率を高くしないといけないし、インフレ率に頼ってはいけないということです。

大下もう1つは、「経済成長すれば何から何まで解決できるのか」ということ。

与謝野どう計算しても、どのようなシミュレーションをしてみても、経済成長だけでは解決しないことがある。その部分は、やはり国民に負担をお願いするしかない。日本の医療制度も、年金制度も、介護保険制度も、“超一流”とは言えないけれども、世界の中では一流の制度です。しかし、このままでは、それらの制度が続けられなくなる可能性もある。社会保障制度はすべてそうですが、最後は、その制度を続けていくためのお金はどうするのかということに帰着する。それが、国民に負担をお願いする唯一の正当性です。そのことを正直に語っているのがわれわれの特徴であり、おそらく中川さんたちも、本当はわかっているんですよ。しかし、総選挙が近づいているのだから、そのような国民受けしないようなことは言わないほうがいいよ、というのが彼らの真意ではないでしょうか。

これほど低い支持率はない

大下福田政権初の国政選挙となった衆院山口二区補欠選挙は、4月27日に投開票され、民主党前衆院議員の平岡秀夫が、自民党新人の前内閣官房地域活性化統合事務局長の山本繁太郎を破り、4回目の当選を果たした。

与謝野この補選の本当の敗因は、自民党の支持率の低さ、福田内閣の支持率の低さです。それが、選挙結果に表れたというだけの話ですよ。わたしは、国会議員になって25年以上になりますが、これほど低い支持率は経験したことがない。小選挙区制のもとでは、支持率は、ちょっとしたことで上がったり下がったりする。ある程度は仕方ありません。ただし、下がったら上げる努カをしなければいけない。それは何かといえば、日本の将来を考えた場合に必要な大きな政策を語ることです。

世の中には、「解決できるが、手間がかかる問題」「努力をしなければ解決しない問題」「努力をしても解決できるかどうかわからない問題」、つまり、答えが見えている問題と見えていない問題があります。答えの見えている問題というのは、実は、試験問題の難易度からいうと易しい。例えば、社会保険庁の名寄せの問題は、努力すれば解決します。これは、難易度から言うと易しい。しかし、日本の経済がこれからうまくやっていけるかどうかは、努力しないと解決しないし、また解決するかどうかもわからない。福田内閣は、そういう難易度の高い問題にも挑戦していく必要がある。

大下自民党内には、支持率の低下にあえぐ福田首相は、7月の洞爺湖サミット後に退陣し、新首相の下で今年秋以降、解散・総選挙を想定して準備するべきだとのムードが急速に広がりを見せているというが・・・・。

与謝野党内には、福田さんのことを「憎い」なんて思っているひとは誰もいないが、洞爺湖サミット後も支持率が低迷すれば、みんな自分の選挙を考えるようになる。いまのままでは、総選挙はできないでしょう。

大下だが、国民の側にも「駄目でもいいから民主党に1度、政権を取らせてみたほうがいい。もし、駄目ならすぐに戻せばいい。このままいくよりは、少し空気を変えてみたほうがいい」という思いが芽生えてきているのではないか。

与謝野そのような雰囲気は、われわれにとって非常に怖いことです。わが党こそが国の将来に責任を持つ政党だということを常に自分の意識として持たないといけない。

すべての税制の改革と増税

大下仮に与謝野がリーダーなら、どのようなことを主張していくのか。

与謝野税収が50兆円しかないのに、国の予算は80兆円。このような形は、いつまでも続けられないというのは自明の理です。これを解決するには、国民に負担をお願いするしかありません。つまり、消費税、所得税、法人税などすべての税制を抜本的に改革し、増税するしかない。ただし、その場合には、「一時的に税金を預かり、社会福祉ですべて返します。ビタ一文、ほかには使いません」という説明をしなければ通用しないと思います。

それから、日本の経済が徐々に劣化しつつあるということを国民に自覚してもらわなければいけない。少しずつ悪くなっていても、みんな気がつかない。あとで振り返って。アッということではいけない。かといって特効薬はないんです。だから、地道な研究開発や 技術開発をみんなでやろうという雰囲気を作ることです。国際競争力の強化というのは、実は研究開発だけでなく、意欲を持つとか、 創造力を養うとか、そういう1人ひとりの人間力も大事です。ところが、閣僚の中には、「日本の経済力は、もはや一流でない」なんてトンチンカンなことをいうひとがいる。それでは、みんな元気がなくなってしまいます。「一流であり続けるためには、みんなでがんばらなければ駄目だ」と号令をかけてくれないといけない。   また、国際経済的には、鉄鉱石、石炭、石油、穀物が高騰している。日本は、資源や食糧の大半を他国に依存しています。この問題をどう考えるか。さらに、地球環境を守るために、日本人が世界にどう貢献していくかということも主張していかなければいけません。

大下与謝野は、麻生太郎、小池百合子とともに「ポスト福田」の有力候補と目されている。

与謝野これは、私も想定外でしたが、急に名前が浮上したので驚いています。名前が挙がるのは名誉なことでもあるが、物凄く重い話をみなさんはされていると思います。当面は、やはり自分たちが作った福田内閣をしっかり支えることが党員としての責任です。名前が挙がっているからといって浮かれ調子になるのではなく、党員としてのつとめを果たしていくのが正解だと思っています。

総選挙後に大連立の可能性は

大下与謝野は、平成12年6月の総選挙で落選を経験するが、小泉元総理はのちに「与謝野さんが落選していなければ、自分ではなく与謝野さんが総理になっていた」と述べている。

与謝野は、小泉政権では、自民党政調会長や経済財政担当大臣をつとめた。もし小泉が総裁選で与謝野を推せば、与謝野にとって有利になることは必至だ。

与謝野先日、私の著書を持って、小泉さんのもとにもあいさつに行きました。小泉さん に「今度、総理も本を書かれるんですか?」と訊いたら、「いや、私の音楽遍歴を書くんですよ」というので、「クラシックですか?」と訊ねると、「いやいや、エルビス・プレスリーも入っているよ」と言ってました。それ以外は、あまり話さなかったですね。そもそも、政局のナマナマしい事は話しませんから。

大下2月4日、与謝野は、民主党の小沢一郎代表が会長をつとめる「国際草の根交流センター」の理事会に、小沢とともに出席した。与謝野は同センターの副会長で、小沢が自民党の幹事長時代からの囲碁仲間でもある。2 人は、気心が知れていて信頼関係は深い。小沢の次の一手は何か。

与謝野いまの小沢さんの思いは、1つは9月の(民主党の)代表選に勝つこと、いま1つは、昨年11月に浮上し、実らなかった大連立構想。これはいまなお捨てていないと思います。さすがに総選挙前にはありえないでしょうが、総選挙後も、いまのような状況が続くならば、連立か、部分連合か、政界再編が起こるかもしれない。(ねじれ国会が続いて)政治が意志決定システムを喪失してしまうことは、日本にとって最大の不幸ですよ。

大下もし与謝野が総理になり、小沢が代表のままなら、極端な話、2人で碁を打ちながら大連立の話をすすめてもおかしくはない。与謝野自身、大連立には賛成なのだ。小沢と福田の信頼関係は決して深くはなかったが、小沢と与謝野との信頼は深い。一挙に話が進むかもしれない。だがその時、民主党内は再び大連立に反発するのか。

与謝野いまの民主党は、現実の政治にまみれたくないと考えているようで、重要な問題から逃げている。去年、大勝した参院選のままのきれいな状況で総選挙に入っていきたいと思っているのでしょう。しかし、それは裏を返せば何もしないということなんですよ。現実に帰らないと国民が不幸に陥ります。

(敬称略)

アサヒ芸能:平成20年5月22号
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