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財源に道筋つけ大胆な経済政策を習慣性を帯びた激痛緩和策はダメ

小此木この世界経済危機は数年にわたって続くかもしれない。景気がさらに悪化する危険が大きいのに、有効な手だてが国際的に打てていない。となると、追加的な対策を、かなりの規模で打つ必要が出てくるのではないか。

与謝野日本経済の危機の主たる原因は外需の落ち込みだ。他国は実体経済の危機に加え金融システム全体が揺らいでいる。幸いなことに、日本には金融サイドの危機はない。ただ、外需の落ち込みには日本が手の打ちようがない部分がある。やはり財政出動による人為的な内需拡大、有効需要の創出を行い、失業や倒産といった社会的悲劇をできるだけ少なくしなければならない。だからこそこれだけの対策をやった。もっとやるべきだという人もいるが、限界はある。財政出動が習慣性を帯びてはいけない。あくまで一時的な激痛緩和策だと考えてほしい。

河合一時的な財政出動だけでは問題の解決にならない。外需、特にアメリカの消費は半恒久的に落ち込んだままになる可能性がある。IMFやOECDなどの予測は、アメリカ経済の成長率は、今年は3〜4%のマイナスで、来年はほぼゼロとしている。住宅価格もまだ下がり続けているし、自動車産業のビッグ3の経営危機をどう処理するかと言う問題もある。消費者債務も累積しており、いつになれば消費が回復するのか、まったく先が見えない。

与謝野アメリカでは、金融システムの危機と実体経済の危機が負のスパイラルを描いてしまっている。そう遠くない時期にアメリカ経済は回復するという楽観論を唱える人もいるが、日本はむしろ悲観論に立って行動しなければいけない。

アメリカの消費に頼る経済から脱却すべき時期だ。政府も企業も考え方を少しずつ変え、内需主導の経済へ転換していくことが必要だ。ODA、技術協力、インフラの整備などを通じ、世界の成長拠点である新興国、特に中国などアジア諸国との協力関係を深める必要がある。

河合世界経済を牽引してきたアメリカの消費が急減すると、多くの国では外需が足を引っ張り、企業や家計のマインドも落ちるので、財政出動でテコ入れすることになる。日本だけでなく、中国、韓国、マレーシア、タイなどアジアの国々財政出動を始めた。だが財政出動だけでは自立的な成長はできない。財政資金をどこへ、どのように配分していけば中長期的な成長につながるかが問題だ。

与謝野今、日本人は何を考えるべきか。「金融大国でやっていこう」との声もあったが、やはり知恵と汗で経済を支える姿勢が必要だ。ひとことで言えば、国際競争力の5文字なんだろう。

日本の経済には、生産性を高める余地がまだある。新しい地平線を求め、新規分野、独自の技術分野を開拓していく。そのために経済危機対策でも科学技術分野9千億円を投入した。海外の新しい成長拠点に対する協力と同時に、日本の競争力を維持するため、新しい技術分野に集中的に投資する姿勢は今回示せたと考えている。

小此木財政出動の規模が大きければいいわけではない。日本経済の新しい経済基盤を作る賢い使い方が肝要だ。例えば、日本版グリーン・ニューディール(緑の内需)といわれる環境分野だ。家庭用燃料電池や電気自動車、太陽光発電を、アジアをはじめ世界市場に売るという可能性を秘めている。また医療、介護、福祉、の分野での雇用創出のため、財政資金を効果的に使う。長期的に産業を育て雇用を生むという視野に立った財政出動が必要だ。

河合アメリカ経済には、消費の落ち込みに加えて、金融システムの傷みが深刻だと言う問題もある。不良債権をどう処理するのかがまだ見えない。ロンドンの金融サミットでは、財政出動の数値目標については合意できなかったものの、あらゆる政策をとろうということで各国が一応まとまった。だが、アメリカとの欧州の金融システムをどのように再建し、今後どう監督していくのかという点については、具体策が出てこなかった。

重要な金融機関や金融商品を規制・監督する金融安定化理事会が作られることになったが、アメリカとの欧州諸国ではだいぶ考え方が違っている。実効性のある形で機能させるために、日本ができることは何か考える必要がある。

与謝野金融が今回の経済危機の引き金になったことで、「金融資本はけしからん。厳しく監督すべきだ」という声がある。確かに「お金がお金を生む」という思想がある種の流行になったことは反省すべきで、透明性の確保は重要だ。アメリカでは、連結対象外の子会社を使った簿外での資産運用が横行し、それが失敗して本体を直撃した例もある。各国とも抑制の利いた金融を目指さなければいけないと思う。

だが、金融を通じて資源が適正配分されるという機能の重要性はいささかも変わらない。デリバティブにしても、金利を確定しようとか、リスクを分散しようというのは、金融の手法として有用だ。そこを取り違えて、経済の手段をどんどん縛るのは、必ずしも世界経済にとっていいことではない。

小此木大臣は、自民党の会合で「自分は宗旨替えをする」と発言した。財政再建優先から財政出動に変わった最大の理由は。

与謝野1929年に世界恐慌が始まったとき、当時のアメリカの人々にさほど危機という意識はなかったのではないか?当時より人間ははるかに賢くなり、一度底抜けしてからはい上がるコストの方が、底抜けしないための初期治療のコストより高いと直感的にわかるのだ。わが国でも90年代に北海道拓殖銀行を破綻させた際、これぞビッグバンだなどと評価した人もいたが、目に見えない社会的コスト、地域経済の疲弊はいかばかりだったことか。

従って、初期段階で一定量の「薬」を使わざるをえないわけだが、薬は小出しに使っても効果がない代わり、あまり使いすぎると習慣性を帯びてしまう。その中間ぐらいが直感的な目安だ。つまり財政出動に対する規律感は必要だが、とりあえず補正予算の編成過程では、財政のことは心配しないで目いっぱいやってみたらどうだろうかということであえて「宗旨替え」という言い方をした。

河合主要先進国の中で、日本経済の落ち込みが最も大きいという深刻な状況を考えると、さらに踏み込んだ経済構造対策が必要だ。根本的に社会保障制度を改革しないと、安心して将来の生活設計や消費活動ができない。医療や介護、子育ての面で制度改革を行い、女性労働を引き出そうとするなど、恒久的な内需創出にもっとターゲットを絞ってもよかった。

小此木やはり、将来の財源確保に明確な道筋をつけたうえで、もっと大胆な経済政策を採るべきだと思う。結局は今後、追加の出動が必要になるのではないか。

ただその財源をすべて増税でまかなおうと考えるべきではない。金融政策による景気浮揚効果も若干はあるだろう。経済成長に伴う税の自然増収と、改革努力による歳出のカットで、ある程度はカバーできる。それでまかないきれない社会保障の充実策などについては、食料品を除く消費税の引き上げや、個人所得税の最高税率引き上げを含めた増税によって財源を確保するという道筋と選択肢を示す。その上で、もっと息の長い追加対策を打っていくべきだろう。

朝日新聞  2009年4月17日(金)
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