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求められる政治家、リーダーの責務
【「日本のあるべき方向」について】
片山宮司とよさの氏が対談


「改革なくして、成長なし」と、颯爽と登場した小泉内閣も、いまや支持率も急落。国民の負担は重くなったが、成長はカケラも見えないのが実態だ。本誌は、神道ジャーナリズムの代表的論客、片山文彦花園神社宮司と、自民党きっての政策通、よさの馨元文・通産省にご登場願い、「日本のあるべき方向」を縦横に語っていただいた。


ローマ亡国の理由と日本再生への道
片山宮司 ローマ帝国はカルタゴとの戦いで、勝ったものの、その後は混迷を続けた。いま、日本も経済戦争後のバブルがはじけて、そういう時期に当たっているのではないか。

塩野七生によると、イタリアの教科書には、「リーダーの資質」とは何かということで、知力、説得力、肉体上の耐久力、自己制御の能力、持続する意思の五ツの資質を挙げ、カエサルだけがこの条件を満足させる人と教えているそうです。

これは驚くべきことで、日本の(歴史)教科書は単なる事実の羅列だけで、国の歴史、国民の精神教育には何ら機能していません。

 
「日本の教育」について元文部大臣として--。
与謝野 私は教育に関しては、一つの規律を教える部分がないといけないと思います。
いま親の世代は、不自由の中で成長したので、子どもたちを甘やかしている。
規律を教えるとなると、えらく堅苦しいものと誤解されるが、世の中には規律があることを、大人が子どもたちに正確に教えることが、子どもに対する親切だと考えています。
戦後、日本に移入された”自由主義”は、その点、間違っていると思います。
大人が子どもに教える、伝えるということは、伝えられた子どもたちが、そこから自分で学習すべきものです。もう一つは知識の部分。
最低限の知識を持っていないと、基本回路が発達してない人になる。だから、そういう知識はいっぱい詰め込む。それを論理的に、知識と論理に基づいて価値判断できる人に成長してほしい。これは個人の資質によって違ってくるが、その点、いまの大人は子どもたちに媚びて、教えるべきことを伝えないで怠けているのが実情です。特に、小学校の課程では「伝習」、伝え告ぐことが大切なことです。

 
片山宮司 ローマはなぜ亡びたか?より、なぜ続いたか?が問題で、ユダヤは核となるユダヤ教、ギリシャは哲学があり、ローマは法による組織力がありました。しかし、なぜローマが1000年以上続いたか分かりにくい。
与謝野 ローマの法律は優れていた。塩野(七生)さんの本に出ているが、ジュリアス・シーザーは他人のカミさんに手を出しているケースが多い。私は塩野さんに「貴女はそれを全部許している感じだが」と聞いたことがあります。
すると塩野さんは「与謝野さん、シーザーは2000年に一回出てくる男。何をしても許してやるのがアタリマエ」と答えられた。
片山宮司 義光にしても信長にしても、天王制を脅かす存在になると消された。頼朝にしても、最終的には政子が殺したのかもしれません。その部分は「吾妻鏡」に欠落しています。黒船が来た時も、結局、日本人はうまく対応しています。ただ、今は小さな危機がたくさんあって、気がつかないうちに、それに対する能力が劣化しています。
与謝野 ローマも組織疲労で徐々に崩壊していった。ローマは蛮族によって亡びたのではなく、内部の精神、規律が亡びたものと思います。
代議士は国全体のことを(片山宮司)
片山宮司 二十年先、三十年後を考えると、いま緊急の問題は、物理的に気力の低下が挙げられています。いまの政治家は、次の選挙のことだけを考え、二十年、三十年後のことを心に描いていない。
与謝野 経済の問題も銀行の貸し渋りなど、当面のことばかり、それより中長期の問題を考えるべきです。少子高齢化社会を支える大切なものは、精神はもちろん大切だが、ある程度の豊かさがないと支えきれません。難局に立ち向かう気力、向上心、勤勉、愛社心など、かつて日本人が持っていたものが、喪われている。最近のアメリカの真似をして、アメリカの制度を取り入れている。まだ日本に余力があるうちに、ここでもう一度、考えるべき時期です。
片山宮司 国民を奮い立たせないと危ない。政治家、リーダーの責任は、重大ではないか?かつての自民党、ローマの元老院の人材豊富な時代から、今は組織疲労をきたし、逆にリーダーの足を引っ張る役割になっている。自民党は、その辺りをどう考えていますか?
与謝野 自民党の議員は偉大なる錯覚をしています。政治主導を全く取り違えている。次の世代の人たちのために、何をしなくてはいけないのか、を考えるべき。政治家は肝心の時にどちらの方向へ行くかを決断するものです。
いまは、細かいところまで口を出して、社会の方向性を示すことに欠けているのが、現在の自民党ではないか、と思います。
片山宮司 代議士には、まちのことより、国全体のことを考えてもらいたい。
与謝野 私はその意味で努力してきました。

全東京新聞 2003年2月28日

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