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トップページ > 記事・論文・講演
> 「改憲作業、協同草案も」 自・公・民 キーマン座談会

「逐条点検 日本国憲法」の連載終了を機に、本誌は、自民党の与謝野馨政調会長、公明党の太田昭宏幹事長代行、民主党の枝野幸男憲法調査会長による座談会を企画した。今秋の結党50周年に向け、新憲法草案づくりに走る自民党。もともとは護憲色が強かったが、「加憲」を打ち出して憲法にかじを切った公明党。そして、党内にさまざまな意見を持つ議員を抱えながら、「創憲」論議を進める民主党。3党のキーマンによる論議からは、今後の改憲に向けた道筋が透けて見えた。
--世論調査などでは今、改憲に肯定的な意見が約六割を占めています。国民の意識は変わったのですか。
与謝野氏
戦争を経験した世代が少なくなり、若い人は自由な立場でものを考えるようになった。そして、国際政治、安全保障に対する考え方も現実的になってきた。
枝野氏
議論自体をタブー視する状況は、確かに変わった。では、人々が憲法を理解し、考えているかというと、そうではない。感心すらない層が増えている。これは、変化ではあるが、前には進んでいない。
太田氏
戦後、この平和憲法が作られたが、今、二十一世紀に入って、一国平和主義ではいけないのではないか、というような議論が、国民の間で起きているように思う。
--制定後六十年近くたった今の憲法をどう評価していますか。
与謝野氏
今の憲法は、あの短期間に、よくああいうきれいな体系をつくったと関心する。その一方で、一つの条文が二つも三つもの解釈を生んでしまうのは、やはり正しくない。国民が読んで理解でき、一つの解釈が出てくる方が望ましい。
太田氏
改憲を主張する人も、今の憲法の(国民主権・基本的人権の尊重・戦争放棄の)三原則を否定する人は、ほとんどいない。天皇制も象徴天皇でほぼ一致しているし、侵略国家にはならないことも認めている。憲法は(改正する場合も)継続性が大事だ。
与謝野氏
継続性という観点で話せば、今の憲法は明治憲法の修正条項に従って成立した。今度、新しい憲法を作るのも、修正条項に基づく。そういう意味では、連続性は維持されると思う。
--憲法論議での各党のスタンスを確認させてください。
与謝野氏
自民党は今、「新しい憲法」という言葉を使っている。十一月の立党五十周年までに草案をまとめるために、議論している。前文から終わりまで・・・。ただ、実際に変えるところは、たくさんはないと思う。
太田氏
公明党は「加憲」と言っている。憲法の原則は堅持した上で、まさに東京新聞が逐条点検で列挙してくれたようなさまざまな問題に対し、段階的に加えていくものは加える。この手法は、現実的だと思う。
--民主党は「創憲」でしたね。
枝野氏
まず、明治維新以来の欧米キャッチアップ型、右肩上がり前提の統治システムを考え直す。それと、国民が自分たちで憲法をつくったという共通認識を、再確認しないといけないと思う。私は「押し付け憲法論」にくみしないが、「憲法は自分たちのもの」という意識が、日本は希薄だ。再定義、再確認の結果、条文が今と全く変わらなくても、それは創憲だ。
--自民党内では、議論中の新憲法法草案について「自民党らしさ」を前面に出すか、民主、公明両党の主張にも配慮したものにするか、路線対立があるように聞きます。
与謝野氏
自民党としての理想は書かなきゃいけない。けれども、真剣に新しい憲法をつくろうとすれば、与党内の合意、民主党との話し合いもしなければならない。単に「草案を作りました」で済ますか、新しい憲法を現実につくるのか。その違いだと、私は思う。
枝野氏
(憲法改正に必要な)三分の二条項がある以上、一党単独での改正は必要ではない。政党間の合意に基づいて協同起草する形でないと、改憲などできるはずがない。もし、自民党らしい草案がつくられれば、それは自己満足でしかない。改憲する時には、瞬時に棚上げするしかない。
与謝野氏
自民党が案をつくっても、それにこだわって一歩も譲らないということは、新しい憲法をつくる作業であり得ない。協同で起草しようという段階に進んだら、自民党がつくった案は参考資料の一つになってしまうと思う。
太田氏
枝野さんも言う通り、手法を考えないといけない。憲法改正は国民投票で決まる。自民党が、自分たちの方針を示すのは大事でしょうが、具体的に国民に提案する段階では、部分修正、あるいは加憲になっていくといくと思う。
--最大の焦点は、やはり九条ですね。
与謝野氏
戦争放棄をうたった九条一項を直そうという人はいない。ただ、(戦力不保持を規定する)二項は、われわれが読んでも分からないような条文になっている。やはり、自衛権を担保するための一定の実力組織を持つことを、規定する必要があるのではないかと。
国際貢献は、どういう形で盛り込むか、まだ煮詰まっていないが、国際貢献と称して、日本だけで行動するのはあり得ないと思う。
枝野氏
歴史的に、自衛の名の下で、いろいろなことが行われてきた。だから、どこまでが自衛の範囲なのか、整理することが大前提だ。われわれは「制約された自衛権」という言い方をしているが、基本的には現行の解釈で許容されている範囲だと思う。つまり、報復攻撃的自衛権行使や、自衛と称した先制攻撃は駄目。そこは、はっきりさせないと、内外に不安を与える。
許容範囲を合意してから、憲法にどう書くのかを議論する。限界点の合意無しで条文の話に入ると、改正しても、解釈が食い違う不毛なことが起こりかねない。
太田氏
九条の一項、二項は堅持する。そして、合憲として認めている自衛隊は、きちんと憲法に明記した方がいいかどうかを議論する。つまり、加憲論議の対象に自衛隊を入れるということです。
与謝野氏
枝野さんが言う「自衛権の範囲」というのは、刑法の正当防衛、緊急避難の論理に近いものではないか。私も、日本が自衛のための必要最小限のものを持てばいいと思う。公明党案も、自衛隊を憲法上の存在にしてもいいと言っている。(二人の主張は)私は、十分理解できる。
--国民の権利義務も大きな争点ですね。
太田氏
国民の権利は、戦前、戦後で違う。新しい人権として、環境権やプライバシー権というものを、加憲をしていく。ただ、権利のインフレ化を指摘する意見もあるので、あれもこれも書き込むということではない。
与謝野氏
権利を書き加えるのが、時代の流れになっているが、何を加えるのか、自民党内のコンセンサスはできていない。
枝野氏
新しい人権は、(幸福追求権を定めた)一三条があるから、憲法的権利と位置付ければ(書き込まなくても)問題ないと思っているが、プライバシー権だけは明記した方がいいのではないか。表現の自由との調整があるからだ。表現の自由の制約は、最小限度でなくてはいけない。制約を受ける対象になるものは、憲法上、明確に位置付けられているものに限定されるべきだと思うからだ。
--自民党内では、義務、責務敵の強化も議論になっています。国家権力を規定する立憲主義からすれば、逆行しているとの指摘もあります。
与謝野氏
立憲主義という考えは、確かに憲法論議としてはあった。しかし、「国家からの自由」というのは、随分昔の「王権と民衆」という考え方の中で出てきた考え方でしょ。日本の憲法は、国民が主権者であることは、はっきりしている。
枝野氏
しかし、憲法が公権力から国民を守る規範であるという定義は、変わらない。名あて人は人権力。憲法に書いてあることはすべて、公権力の義務を書いている。それをずらすのは論理的にあり得ない。
--その他では、地方自治も議論が多く出ている。
枝野氏
今の憲法で一番優先して変えた方がいいのは、地方自治だと思う。欧米キャッチアップ型社会では、中央集権は合理性があったが、成熟した社会では文献が基本。今の憲法は、明治憲法の悪いもの、中央集権を引き継いでいる。「これは中央政府がやる」「これは地方政府がやる」という基本的な構造にしないと、文献国家にはなり得ない。これは、憲法に書き込まなければ実現できないと思う。
太田氏
地方自治の章は、四条しかない。もう少し、力強いものにする必要があるという考えもある。市町村合併が進んでいるので、基礎的な自治体と広域自治体との関係性を整理するということは、非常に大事だ。
与謝野氏
日本の政治制度は、ある意味でダブルスタンダード。国会は議院内閣制で、地方は大統領制に近い。首長の権限は大きいものになっている。地方議会と首長は、一種のチェック・アンド・バランスの関係がなくてはならないと思う。
--今後、どんなイメージで改憲論議は進むのでしょう。
与謝野氏
この前、党の新憲法起草委員会の会合で、宮沢喜一先生から「たたき台として条文がないと議論が進まない」としかられました。だから、不完全な形でも条文の形にして議論しようと、今思っています。
それをたたき台にして、党内でも論議して草案をまとめるが、私個人は民主党、公明党と話し合うベースを考えながら進めていかなければならないと思っている。
太田氏
加憲で、何を重視するかとか、国際貢献をどう位置付けるかなどについて、方向性を出した上で、具体的にどういう条文にすれば書けるのかというところまでは、この一年で詰めたい。ただ、わが党は現憲法が優れているという認識があるから、あまり急いで他党より先行してしまうことがないよう、じっくりとやりたい。
--改正は国会日程にいつから上がるのですか。
与謝野氏
数年はかかる。しかし、ひとたび、三党が「やろうじゃないか」と始めたら、作業は早いんじゃないかな。
--改憲論議が政界再編につながるとの議論がある。
枝野氏
「憲法改正で政界再編」と言っている人は、憲法を変える気がないか、足し算、引き算ができない人かのどっちかだ。
太田氏
「三分の二」という数は、与党、野党が共通して初めて得られる数字。具体的に憲法改正案がまとまってくるということは、政界再編とは違うと思う。
与謝野氏
政界再編と憲法のことは、あまり考えていないが、仮に政治的に同じ考えの人がいたら、一緒の政党を作るのは不自然ではないと思う。しかし、どうなるか分かりませんね。
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