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21世紀の日本の戦略 新たなメイド・インジャパン神話を求めて

1999年はアメリカの一人勝ちが目立ったが、2000年は"日本復活"となるのだろうか。

*対話*
与謝野馨≪前通産大臣・衆議院議員≫
米本昌平≪三菱化学生命科学研究所室長≫


【日本神話の崩壊とニューエコノミーの出現】

与謝野 戦前と戦後の日本を考えるとき、いろいろな神話が崩れてきているんですね。 戦前は「資源がなければ国家経済が発展しない」という考え方が強くありましたが、戦後は「資源がなくても、人という財産があれば経済は発展し得る」ことが証明され、この54年間の日本の発展が戦前の神話を覆しました。

戦後の経済成長の背景には、自由貿易体制、基軸通貨制度の整備があり、日本の産業も得意分野を開拓し、それが世界の人たちに受け入れられた。これが日本経済の発展を支えてきたのだと思っています。

日本の政治は、民主主義に基づいて自由な国づくりをしてきましたが、国民が共同生活を送る上で必要な基本的知識も一方では教えてきたと思います。しかし、そういうことが少しずつ疎かになってしまったことが、現在、犯罪発生率の上昇や職場規律の低下、事故という形で出てきているのではないのでしょうか。

大きな意味での日本の教育上の欠陥が少しずつ見えてきている。日本はこれまで治安良く国を治めてきたし、大きな国際的なトラブルにも巻き込まれずやってきたことは成功だったと思う一方で、国内の社会構造の変化、国際情勢への対応には、十分応えられていない部分もたくさん出てきたと認識しています。

 
米本 私はバイオテクノロジーの社会的影響の研究から始めたのですが、現在は先進国の科学技術政策の比較に取り組んでいます。今、日本はちょっと停滞していて自信をなくしています。

一方、アメリカ経済は非常にうまくいっているし、うまく見せるように政府がリードしている。もともとホワイトハウスは、内政に対する影響力は小さく、実態以上にうまくやっているように見せる傾向があります。

アメリカは、1941年の真珠湾から91年の旧ソ連圏の崩壊まで50年間戦争を戦ってきました。冷戦時代は核兵器の開発・維持・展開にヒト・モノ・カネをつぎ込み、「国防」という名目で公費による研究開発を進めてきたわけです。

ところが、冷戦が終わると、この"巨大な鎧兜"を縮小し再編しなければならなくなった。冷戦時代の技術部門を組み換えるための大義として、「地球環境」「情報化」「企業競争力強化」を挙げて来たんだと思います。

それで過去の国防研究に携わっていた技術エリートたちは、ウォール街や情報産業に転出していったのです。それが結局、"ニューエコノミー"につながり、90年代のアメリカは80年代と比べて非常にうまくいくようになりました。

アメリカには通産省はありませんが、国防政策そのものが国内産業政策の代用となり、これがスピンオフ効果を産み、航空機、コンピューター、情報通信などの民生産業が強くなっていったと思います。

冷戦構造からポスト冷戦構造へ、21世紀へのアメリカの経済戦略の転換は、少なくとも過去10年間を見るとうまくいっているわけです。それと比べて、日本が沈没したように見えていますけれども、私はそんなに心配する必要はないと思っています。これから日本の比較優位の分野を再検証して認識を改め、新たな視点の戦略を持つべきでしょう。

 
与謝野 私も悲観論に立っているわけではありません。日本にも優秀な人材もいるし、技術も相当高いレベルにある。特に日本は貯蓄率が高いので、資本という面では世界のどこにも負けません。

日本経済の500兆円という規模を、日本人は正しく認識していないところがあります。500兆円というのは、ロシア、中国、韓国、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランドを全部合わせたよりもまだ大きいのです。それなのに、自信喪失状態に陥っているのはおかしい。さらに発展できる基盤を持っていることを自覚すべきなのです。

ただ、現状の日本の悩ましいところは、先端分野ではアメリカと競合してきて、家電製品などではアジアからの追い上げが激しくなっていることです。戦後の日本は、造船、自動車、半導体など時代ごとに強い分野を育ててきました。

今でもカメラ等の精密機器、先端的な電子部品など、日本が得意な分野はたくさんあるわけですが、21世紀の日本の経済を本当に豊かにするためには、新しい"メイド・イン・ジャパン"の神話をつくり出していくことが必要だと思います。

アメリカには国内産業政策はないように見えますが、実際はあるのではないでしょうか。予算配分でも、非軍事分野での科学技術研究投資が大きいですし、軍事産業を通じた科学技術予算もありますので、われわれ政治家は、意図して、日本の公的な研究開発投資をしていかないといけないと考えています。

 

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