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鳩山首相「頭の中身」を問う

 

鳩山政権で「世の中暗くなる」

民主党政権はひどいものです。

実は私は、財務大臣として最後の記者会見で、「鳩山政権になったらどうなると思いますか?」と記者たちに質問されたので「世の中暗くなりますよ」と答えておきました。

金丸信さんや小沢一郎さんが自民党の中にいたときの自民党も内側は暗かった。何事も金丸さんに確認を取らないと、モノが決まらなかったからです。

残念ながら、私の予想は的中してしまいました。

民主党は「脱官僚」「政治主導」と言いますが、私には官僚になりかわって民主党が慣れない算盤をはじくような光景に見えてしまいます。

さらに「政治主導」などといって、大臣、副大臣、政務官の三役が担当省庁の予算をすべて見極めようとしていますが、実際に三人で判断できるのは全体の5%ぐらいです。その5%を吟味して、残りの95%を見捨てているのが、民主党流「政治主導」の実態です。

本当に「生活第一」を掲げて国民の暮らしと安心を考えるならば、すでにある官僚機構をもっとうまく使いこなすべきです。専門家集団がいるのに、それを利用せずに不慣れな三人組で何をしようというのか。

政治家は頭がいいわけではありません。本だってたくさん読んでいるわけでもないし、専門分野も限られている。官僚という頭脳集団と競う必要もないのです。

政治家の役割は、あくまで「物事を判断する」ことであって、会社の経営者と似ています。全体を束ね、方向性を示し、官僚に力を発揮してもらう。それが政治家の仕事なのです。

実は「政治主導」という言葉も、それまでの政治への不満を「官僚主導」に責任転嫁するためのものであって、 「官僚が悪い」というのは一番簡単な論理のスリカエです。

自民党は官僚と親しくしていたけれど、それでも一線を画してきました。官僚の人事には関与しない、そして官僚をはげまして、働かせるということ。それから最後に責任は政治家がとるということ。これが、自民党の政治でした。


物を配るのは二番目の仕事

豊かさというのは、我々の先輩たちが汗と努力でつくりだしたものです。しかし、民主党政権の政策をみていると、この豊かさが「天与の物」だと考えているように思えてなりません。物を配るのは二番目の仕事であつて、一番目の仕事は「いかに豊かさを作るか」なのです。

例えば、子ども手当を全額支給すると、年間で約5兆から6兆円近くの財源が必要になります。これは消費税で換算すると、2%に相当する額で、来年度防衛省予算案の約4兆8千億円を軽く超えます。

いくら「事業仕分け」で無駄の削減をしたとしても、初年度で6千8百億円しか削れなかった。それをみると、約6兆円を捻出するのは不可能に近い。そうすると、もう増税しかありません。

増税について鳩山首相は、今後4年間は消費税を上げないと明言しています。しかし、かつて小沢幹事長は細川政権下、国民福祉税として消費税率を3%から7%に引き上げようとしていたし、2005年の衆議院選挙では、当時の岡田克也代表が年金の財源として、消費税を8%へ引き上げることを提案していました。

消費税引き上げをした政権は、竹下政権しかり、橋本政権しかり、次の選挙で負けるという教訓があるために、民主党は消費税ひき上げの重要性を十分に認識していながら、夏の参議院選挙を見据えて触れていないだけです。

私はよく、たとえ話として「国家というのは巨大な割り勘のシステムである」という表現をしています。「安心社会」のためには、皆がそのコストを分かち合わなければならない。国は、無尽蔵にお金を保有しているわけでも、無償の慈善事業をしているわけでもなく、税収というかたちで国民からお金を預かり、それを福祉や教育、防衛や国土保全や医療につかっているにすぎないのです。

中長期的な財政運営の方針なくして大きな予算を使えば、日本の財政はパンクします。民主党政権の言う「生活第一」、つまり「持続可能な社会保障制度」は財政が支えているのであって、精神力でやろうとしてもダメです。民主党は言葉で解決できると思っているけど、言葉では何の解決もできません。


鳩山政権の正体見たり

驚いたのは、山岡発言です(読売新聞1月19日付)。民主党の山岡賢次国会対策委員長が、国対全体会議において、「(内閲)支持率は下がっているが、予想よりも高い。地元では非難を浴びると思うが、子ども手当法案が通って生活に影響してくるとなれば、また大きく変わってくる」と発音した。要するに、バラマキをすれば支持が回復できる、と述べているのです。「鳩山政権の正体見たり」ですね。

財政的な危機が予測されるにもかかわらず、95兆円もの概算要求を平然と出す民主党からは、場当たり的な財政の帳尻合わせと、マニフェスト実現によって選挙で勝利しようという姿が浮かんできます。その証拠に、いまだに具体的な財政再建計画を発表していません。

政権交代から5ヶ月が経とうとしている今、そろそろ地に足をつけた議論の上で、現実に近い落としどころを考えてもらわねばなりません。


「鳩山さんは地頭が悪い」

民主党は成長戦略においても、いざやろうとしても何のアイデアもありませんでした。急いで、各省庁からアイデアを出させて、ホチキスで束ねて「はい、これが成長戦略です」と。しかしさすがにそれではまずいということで、ライターを雇ってきて、書き直させたのが実態です。民主党政権は、経済のパイを大きくする成長戦略なしに、予算の配分を変えているだけなのです。

例えば、巨額な子ども手当を配るのであれば、並行して子育て産業の育成をする、そして子供をもつ女性の雇用の受け皿を創出する、そこまでの構想を描かなければ、約6兆円もの貴重な財源は貯金に回ってしまうだけで景気刺激につながりません。

鳩山さんは、経済のことも法律のことも何も知らない。受験勉強はできたけど、あとは全然進歩していないのです。「鳩山さんは地頭が悪い」と言った人がいますが、自分の中に軸がないために、普天間基地問題ひとつとっても意見がぶれにぶれている。

そして、言葉を大切にしない。政治家は、一度言ったことに責任をとらないとダメなのです。「マニフェストは国民との契約です。したがって暫定税率は廃止します」と言ったにもかかわらず、暫定税率を存続させ、5閣僚が集まって「日航は潰しません」と言ったにもかかわらず、「日航を法的整理します」という。

偽装献金問題では、母親から12億6千万円に上るお金をもらっていて、贈与税を払っていませんでしたが、これは「平成の脱税王」と呼ぶべき金額と言えます。平成になってから、こんなに脱税をした人はいない。これだけでも、鳩山さんは総理大臣としての資格を決定的に失ったと言えるでしょう。


政治家としての原点

私の政治家としての原点は、「この豊かさを失いたくない」というものです。私が育った時代も、そして皆さんが育った時代も、毎年少しずつ生活が豊かになる、という世の中でずっときました。戦争が終わったときに私は小学1年生でしたが、それ以来戦争はない。犯罪も少ない、言論の自由もある、そんな安定した社会を形成してきました。

その豊かさと日本社会のいい雰囲気を、私は経済、財政、国民の安心安全という3つの分野において、後生に残していきたいと願っています。

日本は、もともと豊かな国ではありません。「恵まれて豊かになった国」と、「努力して豊かになった国」とい うのは違うのです。

日本は「努力して豊かになった国」であって、そのスタートラインを間違えると、「金融資本主義」のような、金が金を生むという虚構の世界に走ってしまうことになります。日本はモノやサービスをつくって、それを日本人が使い、世界にも供給するという「貿易立国」としてしか存立ができないのです。

そして、貿易立国であり続けるには、他国には真似できない技術力、独創性がなければいけません。技術というのはすぐ追いつかれる宿命にあります。開発した技術は自然に拡散をし、必ず国境を越えてしまいます。特許をはじめとした知的財産権保護の仕組みで守られ、日本が独占的な立場を維持できるのは、せいぜい10年ぐらいでしょう。日本は21世紀も、休むことなく前進し続ける「自転車操業」にならざるを得ない。それは資源に恵まれない、国土も広くない「日本人の宿命」と言えるでしょう。


自民党はどう出るか

自民党の谷垣さんは、もっとファイティングポーズが必要です。"鳩と雀の争い"みたいな、小競り合いをしていてはダメです。起死回生のマジックというものはないのだから、地道にやっていくしかありません。

今の民主党は、参議院選挙の射程しか考えていません。彼らが考えているのは、自民党をいかに潰すかということ、鳩山・岡田・菅(直人)の権力闘争、それと小沢幹事長が刑務所にいかないこと、この3つです。

鳩山政権が後世の歴史の審判に耐え得る政治をやっているとは、到底思えません。何が何でも選挙に勝つために、「選挙に勝てばなんでもあり」の世界に突っ走る状況が起きています。

何の理念も戦略も持ち合わせていない民主党政権に、このまま国の運営を任せておくつもりは毛頭ありません。次世代の日本人のためによき日本を残すこと、それが政治家人生における最後の使命だと思って、発言をしていくつもりです。

歴史通(ワック出版):2010年3月号
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