| これから10年間ぐらい日本が何を目指してやっていかなければならないか、大きな視点から3つのことを皆様方にお考えをいただきたいと思っております。
まず、第一には、短期的な景気がいい悪いということとはまた違った次元で、日本の経済を考えていかなければなりません。1つには、日本が今後21世紀100年の間、ちゃんと豊かに生活をしていくためには何が必要かということです。一言でいいますと、今後日本が国際競争力を維持できるかどうかにかかっています。一昔前は日本はナンバーワンであるとか、日本の国際競争力はすばらしいといわれました。たしかにある分野では日本はまだ優位性を保っていますけれども、多くの分野で国際競争力を失い始めているわけです。例えば秋葉原に行って買い物をされますと、すぐわかるのですが、テレビも冷蔵庫もビデオデッキも日本の国内で製造されたものはほとんどなくて、日本の会社が海外で製造したものが日本のブランドで売られているのです。東南アジアの人たちが技術を吸収する能力を非常に持っていたということです。日本が出しました技術をほんとに急速に吸収したということもありますし、非常に規律正しい労働力であるということもわかりましたし、そういう意味では、いわゆる在来型の技術はほとんど中国、韓国、東南アジアに負け始めているわけです。
日本人が生活をするために必要な富を確保するという観点からは、日本の得意とする分野を今後10年間できちんとつくっていかなければなりません。それとあまりにも生産拠点が海外にうつりますと、産業の空洞化という言葉で我々呼んでおりますけれども、やはり日本の国内における雇用機会が少なくなって、一時のアメリカのような現象、生産拠点が国内にないという、大変困った状況が来るわけです。
国際競争力を維持するためにはどうするのか。在来型の技術の中で、特に進んだ分野で優位性を保つということが大変大事なことでございます。そのために何をするのかといいますと、きょう注射して、あした病気が治るという薬は実はないわけです。
国際競争力を保つためには、幾つか大事なことがあります。一つは今、たくさんの公共事業をやっておりますけれども、日本の政府がやっております公共事業は国としての生産性を高めるところに使われていません。要するに経済効果が大変少ない分野に投資がなされているということであって、公共事業一つとっても、経済効果の大きい、国際競争力に間接的ではありますけれども貢献をする。そういう分野に国が借金をして投資をするのであれば、投資をするという、そういう考え方に変わっていかなければならないと私は思っております。
第2番目は、国が借金をして投資をするのであれば、技術とか基礎研究とか、そういう分野に投資を集中する必要があります。これはすぐに研究の成果が出てくるわけでもありませんし、1日で技術が進歩するわけではありません。しかし、そういう地道な学問分野、研究分野、応用分野、いろいろな技術開発の方に国として、あるいは民間企業が持ってい
る力を投資していって、技術に裏付けられた日本の経済、それから他の国々の追随を許さない分野を、この10年間でつくり上げていく必要があります。
しかし、今日注射してあした効くような分野にだけ投資をしていく傾向があって、確かに効くんですけれどもそれは今申し上げましたような日本の本当の基礎体力には結びつかないということです。やはり国際競争力というものを維持する。日本のつくる品物、あるいは日本が提供するサービス。これは国外に対する製品でもいいし、サービスでもいいですし、また国内での製品、あるいはサービスというものが、質の面でも価格競争力の面でも、あるいはアフターサービスの面でも非常に強いという基礎的な体力を養わなければならない。
即効薬というのは実はない。王道を歩んで、日本の経済を本当にしっかりしたものに立て直していく努力を、国民のご理解をいただきながら始めるということが私は大事だろうと思っています。
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