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論点 不良債権解決へ資本再注入を

小泉総理は昨年自民党の総裁に就任し、総理に就任して以来、改革を唱え続けている。参議院議員選挙前のスローガンは「構造改革なくして景気回復なし」ということだったから、小泉さんの考えの中には構造改革をやれば景気が回復し経済は成長するという考え方があるのだろうと思う。しかし、事柄はそんなに簡単なものであるとも思えない。その道筋もよく見えない。

経済学者小宮隆太郎先生が私の友人に三十年前語ってくれた言葉がある。
「日本人は問題がわからなくなるとすぐにこれは構造問題だという癖が昔からあるんです」。

この言葉をよく噛み締めてみたい。構造改革という極めて言葉の定義の曖昧な言葉を使って全てを論じようとすることは私は無理があるように思えるし、改革は何の為にする改革か、また、どのような目的を持ったものか、どのような手順で進めるのか、という事をまず考えなければならないし、また、それを国民に明らかにしなければならない責任が政治にはある。


しかし、多くの国民は小泉さんが八十%という高い支持率を背景にいろいろな事を直してほしいと願っていることは事実だと思う。

しかし、小泉総理のいう改革はテーマがよく整理されていない。


例えば、この改革は財政再建に繋がるとか、これは社会保障制度の維持継続に繋がるとか、これは国際競争力の強化に繋がるとか、いわば目的意識や目標がはっきりされないまま物事が進んでいるように思える。

例えば、特殊法人改革でも民営化か廃止かという乱暴な議論は、選挙のスローガンとしてはいいが国民のニーズに応えているのかと思う。

例えば、住宅金融公庫の例を取ってみよう。住宅金融公庫はその機能として、住宅やマンションを買いたい人に長期で安定した金利で住宅取得資金を貸し付けるという政府の住宅政策を担っている政策機関であり、政府の住宅政策を遂行する為のツールである。低金利で融資する訳であるから、金利差が逆鞘になる事は当り前の事であり、逆鞘分を予算から投入して比較的所得の低い階層に住宅の取得を促進させる目的を持っている。


そこで、これを民営化しようという議論である。その根拠は民業圧迫だという。金融機関が本来できる分野を官が奪ってしまい、銀行等の事業機会を失われているというのが議論の根拠である。銀行等も住宅に低利融資できるという主張は低金利時代であるから可能なのであって、今のように短期金利が0に近い状況はいずれは金利は上昇するから、安定した低金利を一般の金融機関がいつまでも提供できるとは思えない。

要は住宅金融公庫という組織をどうするかという問題でなく、政策金融を通じて、住宅取得政策を続けるかどうかの問題であると思う。ここには組織形態論と政策機能論との大いなる混同がある。

石油公団改革について言えば、私個人は公団の組織はどうなっても国民生活には影響はないと考えていた。但し、石油公団が担っていた国としての政策機能、すなわち石油備蓄と海外での石油探鉱は是非残さなければならないと考えていたので、今回の改革は妥当であると思う。


小泉改革は次の二点に的を絞るべきだと思う。

一つは、財政再建である。財政再建を切り口にすれば、多くの改革はその道筋をつけることができるし、改革の根拠や目標が明確になると思う。しかし、到達点は国民の負担の増加に、税制にしろ、社会保険料にしろ、いかざるを得ないと考える。

もう一つ、小泉内閣が目指すべきものは、日本経済とりわけ「国際競争力」の強化であると思う。この改革には、教育、技術力、規制緩和など多くの分野が含まれ、二十一世紀の豊かな社会を継続するための不可欠の事である。
連続して一年以上日本の貿易黒字が縮小し続けていることに着目して、大胆な政策を小泉内閣には期待したい。

【産経新聞『論点』 与謝野馨原稿】


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