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景気対策としての積極財政路線の継続か財政再建路線への転換かという「二者択一」的な政策論議が国会をはじめいろいろな場で行われている。しかしながら、この「二者択一」の議論は、政策論議を単純化し、思考停止をもたらし、「積極財政路線」が「財政規律」放棄の「隠れみの」として使われるという弊害を生み出していることは、否定できない。
現下の経済政策の最大課題は、公需主導から民需主導の経済成長への円滑なバトンタッチであることはだれしも異存はない。もちろん財政が民需主導による経済成長の「足をひっぱる」ことは避けなければならない。他方、国内総生産(GDP)の130%近い水準にまで積み上がってしまった先進国最悪の公債残高水準(過去40年間すべての先進国でGDP比が130%を超えた例はない)を考えると、もはや財政にそれ以上の役割を担わせることもできない。
この二つの制約のなかで政治が今行うべきことは、金額の議論よりも、むしろ内容の議論である。国の生産性向上、経済構造の変革のために真に必要な予算の重点化に向けた政治的リーダーシップの発揮であり、財政再建への総合的な戦略構築の準備を始めることである。
国民の間では、いわば「孫のクレジットカードで買い物をしている」ような今の財政破綻状況を心配する声が少しずつ大きくなっている。こうした中、政治の側では、「積極財政」か「財政再建」かという入り口の議論から一向に深まってこないように見える。現時点で政府・与党にとって真に必要なことは、単純な二者択一の議論ではない。財政の今後の見通し・財政資金の使い方・節約方法などについて、国民に対して丁寧に「説明責任」を果たすことであり、今後の対応について合理的に説明を行うためのさまざまな準備に着手することである。
財政危機をめぐる本質的な問題を二点しておきたい。
第一に、財政危機の影響をどう考えるかという問題である。国債は政府の借金であると同時に民間の資産になっており、国内債である限り、国全体で見れば、「右手から左手への借金」に過ぎず問題はないとの意見を述べる向きがある。しかしながら、国債は将来の税収を担保に発行されるものであり、国際発行増による納税者の負担増は将来に向かって確実に企業や個人の活力を奪い、経済全体の活力を低下させることは明らかだ。
また、既にわが国は他国に例がないほどの将来世代への負担先送り構造(世代間の負担格差は米国の5倍近いとの試算もある)を抱えているという現状がある。
第二に、財政再建を軌道に乗せるまでに、どのくらいの時間的余裕が残されているのかという問題である。もちろん、これだけ巨額の財政赤字をすぐになくすことはできず、長期的に対応することが必要である。しかしながら、まず第一段階として政府債務(国および地方)の対GDP比が雪だるま式に累増していかないようにする必要がある。
こうしたいわば財政の「サステナビリティー(持続可能性)」の確保に向けた取り組みを軌道に乗せるまでに、許された時間的余裕はあまりない。
例えば、過去の経験則から当初予算ベースでの新発国債の発行規模(平成12年度32.6兆円)が実質税収(税収から地方交付税を差し引いたもの、33.8兆円)を上回る段階が危険水域であるとの見方が市場関係者に多い。今のままでは遅くても14年度には危険水域に入る可能性があり、13年度、遅くても14年度予算編成時までに財政再建に向けた具体的ステップを踏み始めないと債券市場の混乱、長期金利の急上昇が生じる可能性がある。
また、わが国の部門別資金過不足を見ると、直近では、個人部門の資金余剰(対GDP比5.9%)に加え、法人部門が資金余剰(同6.5%)となっており、公的部門の資金不足10.9%をファイナンスしているとの構図になっている。
企業の設備投資が今後活性化すると、法人部門の資金余剰幅は急速に縮小していく。民間設備投資の回復が見込まれる13年度には公的部門の資金不足を縮小しなければ、海外からの資本にファイナンスを依存する状況になり、金利の急上昇が生じる可能性がある。
さらに、中長期的には、個人部門の資金余剰金が縮小していくことが予想され、この点からも公的部門のファイナンスは制約を受けることになる。
税制債権の問題は、単に国の歳出削減のみならず、税制全般の改革、公正で効率的な社会保障制度の再構築、地方行革と財源の移譲など幅広く国全体の制度的枠組の変革を必要とする問題である。また、低成長の少子高齢化社会における「受益と負担」の「公正さ」をどう確保するのかという問題でもある。放置すれば最後は大インフレで解決という最も愚かな事態を招くことになる。残された時間は少ない。総合的な検討開始のために一刻も早い準備が必要である。
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