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経歴

2016年6月30日

私の歩んで来た道(45)

二年生議員になった私は嬉しかった。3年間は待たなければならないと思っていたのに、それが半年ですんだ。これは幸運以外のなにものでもないと思っていた。
鈴木内閣が発足し、中曽根先生は行革の大臣、私の事を文字通り全力を挙げて応援して下さった渡辺美智雄先生は大蔵大臣になられた。一年生議員の時、先輩の野田毅議員が議院運営委員会の委員のポストを譲って下さった事があるが、私は希望してなかなか入る事のできない大蔵委員会に入ることができた。
大臣は渡辺美智雄氏。大蔵委員会委員長は綿貫民輔氏、委員会の理事は山中貞則氏、小泉純一郎氏等と後に大物となられる先輩が並んでおられた。委員には後に総理になる麻生太郎氏、私と一緒に難しい仕事に取り組んだ柳沢伯夫氏等がおられた。
この委員会は仲良し委員会で与野党が腹を割って互いに譲り合いながら、委員会の運営にあたっていて、ギスギスしたところのない委員会であった。出席はうるさく、定足数は特にやかましく、委員が集まらないと委員会は止まる。私も一度無断で欠席して、えらく叱られた事がある。(後で中曽根先生からも、今後のこともあるからマイナスになるような事はしないようにと、注意を受けた)
ある時自民党の割り当て時間が有るというので、私に質問させて下さいと申し出たところ、30分の質問を許された。
私は郵政の中での貯金の問題、その金利の問題をとりあげ、官業の行動として問題であるという質問をした。渡辺大臣も極めて誠実に答弁して下さったし、質問が終わった時、小泉理事に時間を戴いた事にお礼を申し上げたところ、「今日の質問は良かったよ」と言って下さった。
実はこの事が後あと重大な結果を生むことになった。すなわち小泉総理の郵政改革を行う、自民党政調会長に抜擢されるきっかけであったのである。私としては先見の明があったなと思っている。

【参考:議事録】

綿貫委員長 与謝野馨君。
与謝野委員 渡辺大蔵大臣に郵便貯金制度にかかる諸問題につきまして御質問さしていただきたいと思うわけでございます。
先ほども大臣のお答えの中にございましたが、最近の郵便貯金の貯蓄額は大変大きな伸び率を見せておりまして、額にいたしましても五十六兆、個人預金の中に占めるシェアは三十数%という、民間の金融機関に比しまして政府が行っております預金吸収の率が大変高くなっているわけであります。もともとこの問題は、私たちの日本では自由主義経済体制をとっておりますし、民間の活力を最大限に活用するというのは根本の方針だろうと思うわけでございますが、大蔵大臣は、郵便貯金制度というものは民間の金融機関を補完するものであるというお考えなのか、あるいは郵便貯金というのは現段階においてもそれなりの意味と存在意義を持つというふうに考えておられるのか、その点についてまずお伺いしたいと思います。
渡辺国務大臣 自由主義社会では、民間に任せることが適当でないとか、民間でやれないものとか、非常にリスクが多いとか、そういうようなものを国がやるというのが原則じゃないか、こう思っております。もともと郵便貯金はいろいろな変遷はございましたが、国民の零細な財産の管理人として、またあるときには国家資金の需要を賄うための財源として使われてきたわけでございます。しかしながら、やはり国の事業でございますから、民間で十分できるものについては余り国が邪魔になるような、本来の民間の業務を圧迫するようなところまでいったのでは行き過ぎじゃないか、さように考えております。
与謝野委員 そこで、郵便貯金になぜこれだけ多額の預金がシフトするのか、こういうことでございます。いろんな議論がありますが、郵便局は民間の金融機関がない山間部あるいは市町村にたくさんあるんです、そういうところの零細な預貯金を集める、こういう説明もなされているわけですが、最近では郵便貯金が大都市部で大変な躍進をしているということもありますし、また零細預金を集めるということでスタートしたというふうに大蔵大臣はお答えですが、最近では高額所得者による大口利用の傾向が非常に高まっております。郵便貯金にこれだけ集まるというのは、やはり郵便貯金が持っております、特に定額貯金がそのときどきの最高の利率を利用できるという優遇措置とも思えるそういう商品を持っているというところに私は由来していると思いますし、またグリーンカード導入に伴いまして何か税制上の優遇措置があるのではないかというふうに預金者が錯覚をする、あるいは錯覚をさせるような勧誘方法をされるところに考えられないような預貯金のシフトがあったと思うわけでございます。現在もうすでに三十数%のシェアを郵便貯金は持っておりますが、これ以上のシェアを持つということは私は不健全なことだと思いますし、シェアに歯どめをかけるということを大蔵当局としてお考えなのかどうかお伺いしたいと思います。
渡辺国務大臣 どれくらいのシェアが適切かということは一概に申し上げられないわけでございますが、一般の金融機関の預金の伸び率と郵貯の伸び率がほぼ比例していれば私は別にそう問題にすることはないのじゃないかと思っております。また、郵便局が、特定局などは町の中に非常に溶け込んでおって、非常に少額のお金の出入りには便利がいいとか、店舗数が二万数千軒あるとか、あるいは全国どこででも引き出しができるとかといったような便宜のあることは事実でございます。
しかし、いま与謝野議員が言ったように、郵便局へ持っていけば多額の預金であっても分散されちゃって税務署の手の入らない聖域になってしまうのだというような間違った考えのもとに預金されたり、あるいは脱税のために利用されるとか、あるいは過当な勧誘があるというようなことがあれば、これは困った問題であって、われわれとしては社会的公正の確保とともかく正しい税制のあり方というような点から考えましても、郵便貯金は国家機関がやっておることであって、国家機関が脱税に手をかすというようなことはとうてい考えられない問題だ。
しかし、やり方がまずければ現実的にだれが幾ら貯金したのか掌握することができないということでは、利用されて結果的に国家機関が脱税その他に手をかしたということになってしまうわけですから、そういうことにならないように、まず郵政当局に対しましては個人の限度管理を厳重にやってもらいたいということは強く申し入れてあるし、またグリーンカードが昭和五十九年に発足をするわけですが、その際には郵便貯金の預け入れについてもグリーンカードを用いて限度管理をやっていただきたい。それからなお、いまの高金利をねらって郵貯に駆け込んでいくというような資金があるとすれば、それらについてもそのまま野放しに見逃すというわけにはまいりませんので、さかのぼって限度管理を適正に行う、それらの手法、技術的なやり方については両事務当局で専門的に話し合いを詰めて万遺漏のないようにやってもらいたいということで両省で話を進めておるところであります。
与謝野委員 それともう一つの郵便貯金に対する批判は、先般の公定歩合の引き下げに伴って郵便貯金の預け入れ金利を連動して引き下げるということは大変素直に郵政当局もお認めになり、郵便貯金の金利も下げられることになったわけですが、従来からのいきさつを見ますと、公定歩合は下げる、郵便貯金の金利の方は据え置くのだと言って郵政当局ががんばるということで、金利体系を一元的にする、あるいは金利政策によって景気対策を行うということに対しまして大変な阻害と申しますか、一元的に金融政策が運営できないという事実が過去何回か見られたわけでございますが、金融政策の有効性を著しく阻害するという面で、今後、公定歩合の上げ下げに伴いまして大蔵当局としては郵政省に対して一体どのようなお話をされているのか、どのように協力体制をとっておられるのか、その点をお伺いしたいと思うわけであります。
渡辺国務大臣 お話しにありましたように、市中の金融機関の預金金利を下げる、そのときに郵便局は一緒に下げられないということでは預金についての競争条件が不公平になりますから、やはり下げるときには同じような幅で同じ時期を期して下げてもらわなければならぬということで、それは内々話をいたしております。
与謝野委員 私どもが心配しておりますのは、五十六兆もお金を集めまして、一体そんな運用先があるのかどうかという問題が実は一つございます。民間金融機関あるいは零細な信用組合から始まります信用金庫、地方銀行、一般市中銀行がどういう状況になっているかと申しますと、預金が純増する、その預金の純増についてはほとんど国債の購入に充てられてしまう。一方では郵便貯金がどんどん預金を吸い上げるので市中に残る資金は非常に少なくなるということで、民間の金融機関、これはもう零細から大きな金融機関に至るまでの共通の話ですが、国家がほとんどの資金を吸い上げて、民間が経済活動する資金がだんだん少なくなってくる、こういうことですが、一つ問題は、五十六兆も郵便貯金を集められて、預け入れ金利とは逆ざやの、たとえば一%逆ざやであっても五千六百億の利払いの不足を一般会計から穴埋めしなければならない。これが二%逆ざやになりますと一兆を超える利子補給をしなければならないという、国家がお金を集め過ぎたために一般納税者が納めた税金が利払いに使われるという非常に不健全な状態も予想されるわけでありますが、大蔵大臣は、郵便貯金で集めました多額の貯金を預け入れ金利、支払い利息よりも高い利率で今後運用することに自信をお持ちなんでしょうか。それとも、多額の利子補給をしなければ利息の支払いはできないというふうに懸念をされているのでしょうか。いずれでしょうか。
渡辺国務大臣 これは実は非常に重要な問題でございます。
御指摘のように、仮に市中の金利が下がるというようなときに、すでに預け入れられた数十兆の郵便局の金利が最高の利率に書きかえられて、それで居座るということになると、本当にその利息を高く払っておいて、仮にそれを財投で使うときにはやはり利子補給でもしなければ借り手がないということになってまいりますと、往復びんたみたいなもので、これは大変な問題であります。したがって、われわれとしては、すでに発生したものについては、先ほど言ったように、脱税のためにもぐり込んだようなものは追いかけていっても引き出してこなければならぬと思っておるわけでございます。今後そういうような事態が再び起きないようにいろいろ工夫をしていこうと思っております。しかし、なかなかこれは重大な局面であることは間違いありません。
与謝野委員 そこで、資金運用部資金として運用されておりますが、これは事務当局にお伺いしたいのですが、五十四年度の実績で、資金運用部資金に対しまして、財投関係で一体幾らぐらいの利子補給をされたのか、お伺いしたいわけでございます。
矢崎(新)政府委員 御質問の趣旨は、郵便貯金として受け入れられました資金が資金運用部に預託されまして、そこからさらに財政投融資の主な原資といたしましていわゆる財投対象機関に貸し付けられているわけでございますが、その財投機関の中で一般会計から補給金が出ているものがあるので、その額がどの程度か、こういう御質問かと思いますが、その金額は五十五年度で全体で約七千四百億という規模になっております。
与謝野委員 いろいろな面で政策的に利子補給をしたりあるいは政策的な金融を行わなければいけない局面は別といたしまして、この急増する郵便貯金を資金運用部が運用するといたしまして、やはり今後は、ことしで七千億ですから、さらに利子補給というものが日本の財政を圧迫する非常に大きな要因になるのではないかと懸念をしておりますが、実際にはどんどんお金が集まってきてしまう。払うほどの利息ではなかなか運用できない、こういう傾向が続くと思うわけですが、その辺はいかがお感じになっておられるでしょうか。
矢崎(新)政府委員 ただいま申し上げました一般会計からの補給金がどうしてそういう形で出てくるかという点でございますけれども、これは、御承知のように、各機関におきましていろいろな政策目的を実現いたしますために、たとえば低利の貸し付けをいたしておりますとかというようなことがあるわけでございまして、こういった補給金はそれぞれの政策目的に即して、その結果といたしまして出てくる経費ではないかというふうに考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、この問題は、直接的にはそういった政策金利等についての考え方をどういうレベルで考えるかという政策問題の一つとして今後十分検討を続けていかなければならない分野の問題であろうかと考えておる次第でございます。
与謝野委員 そこで、ある一部の議論で、国家がこれほど預貯金を集めるのであるならば、資金運用部資金で国債を買ったらいいじゃないか、みずから集める預貯金で国債を引き受けて、一般市中金融機関に対しての国債の押しつけはやめたらいいじゃないかという議論がございますが、大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
渡辺(喜)政府委員 資金運用部資金におきましては、その国債引き受けということについては非常な努力を払ってきておるわけでございます。市中金融機関その他の国債の引き受けというものが、委員のおっしゃるとおり、最近の大量発行に伴いまして大変な環境になってきているということも十分承知しておるわけでございまして、運用部の方もできる限り国債引き受けの増大に努力をしたいと考えております。現に最近、五十三年度、四年度、さらに五年度の計画におきましては累次国債引受額を大幅に増額してまいっておるわけでございますし、さらに年度中におきましても、資金の状況等を見まして可能と考えれば運用部の方へシ団から引き受けをシフトしていくというような努力も重ねてまいっておるわけでございます。
ただ、資金運用部というのは、その性格上原資は受け身である。政策的に原資を何らかの手段を講じてふやすというふうなことはなかなかむずかしい分野でございまして、したがって、原資の増加額もやはり限りがある。これを政策的にどんどん増加するというわけにはいかない面があるわけでございます。一方、運用部の資金に対する財政投融資等の需要も非常に強い。特に、昨今のように一般の市中金融がかなり詰まってまいりますと、逆に財政投融資に対する需要が強化されてくる、こういうようなことになっておりまして、財政投融資もやはり非常に大切な国の経済政策でございますので、それらを総合勘案いたしまして、可能な範囲で運用部の国債引き受けを図っていく、こういうふうな考え方でおるわけでございます。
与謝野委員 そこでお伺いしたいのですが、民間の資金が詰まってくるということですね。確かに詰まってきているわけですが、幾つかの例があります。たとえば日本開発銀行という銀行が、これは産業を育成するための金融機関だと私は思っておりましたが、ホテルなどの新築に一生懸命融資をしている。融資をするにつきまして、一般市中銀行とどっちが貸すのだという競争になる。これは明らかに財投の水ぶくれで、財投でお金を出しても日本輸出入銀行は金を使えない、日本開発銀行も貸出先がないということで、むしろ一般市中銀行が担当すべき分野にこういう政府金融機関が金があるために無理やりに出てきているということの方が私は実情ではないかと思っております。財投の方に要請されるというよりも、むしろ財投の方が無理やりにそういう分野に出ていっているというふうに感じているのですが、いかがでしょうか。
米里政府委員 御承知のように、政府関係金融機関の融資はそれぞれの政策目的に沿ったものとして行われるということになります。ホテルなどの融資という御指摘もございましたけれども、ホテルであるがゆえに政府関係金融機関から融資するというような考え方ではございませんで、これは他の政策目標、たとえば都市開発であるとかあるいは地域開発であるとか、その中の一環としてのホテルに対する融資であるということで、政策目的はそれなりに貫いておるというふうに私どもは思っております。
また、御承知のように、政府関係金融機関が融資します際には民間との協調融資という形もとっておりまして、そういった面からも、政府関係機関の融資によって本来民間の行うべき分野が侵されておるというような状態にはないのではないかというふうに私どもは考えております。
与謝野委員 また郵便貯金の問題に戻ります。
いま郵便貯金では進学ローンとかゆうゆうローンとかいうのがございますが、個人年金に進出しようとか、あるいは総合口座でもう少し融資機能を強化しようとか、郵便貯金が一般金融機関の属性をさらに持とうとしている傾向がございます。先ほど渡辺大蔵大臣がお答えになりましたように、民間がやれることは民間にやらしておくという御思想のようですが、郵便貯金がそういう分野に進出されることについて、あるいは進出したいという姿勢に対してどういうお気持ち、お考えをお持ちか、お伺いしたいと思うわけであります。
米里政府委員 先ほど来お話が出ておりますように、本来の郵便貯金の目的は簡易で確実な貯蓄手段の提供であるということでございますから、そういう分野を越えて郵便貯金が機能を拡大していく、しかもその機能を拡大する先の分野というのは、御指摘もございましたようにすでに民間の金融機関でやっておることである、こういったようなことになりますと、私どもは、郵貯の本来の性格というものから考えましても、新たに機能を拡大していくというのは国の事業としては適当ではないのではないかというふうに基本的に考えます。
与謝野委員 そこで、銀行局長にもう一度お伺いしたいのですが、国家が受け入れる預金というのは、リスクの面からいいますと最もリスクの少ない、確実性の高い預金だと私は思うのです。その最もリスクの少ない確実な貯蓄、これに対する支払い利息が総合的に考えれば最も有利な利息になっているということについてはどういうふうにお考えでしょうか。
米里政府委員 これまた先ほど来お話が出ておりますような郵便貯金の性格、つまり非常に零細な貯蓄手段の提供であるということから考えまして、そういった零細な貯金であるということに着眼いたしまして、この制度の取り扱いにおいて、税制上の優遇であるとか、あるいはまた商品性の有利さであるとか、金利の問題であるとか、店舗であるとか、そういったような問題が出てまいったのだと思います。したがいまして、現在郵便貯金がどういう性格のものになっておるかということをよく検討する必要がございます。それに伴いまして商品性、金利などについても、私どもとしてはできるだけ民間とイコールフッティングの状態に置かれるべきものではないかというように考えております。
与謝野委員 最後に大蔵大臣にお伺いしたいのですが、郵便貯金制度そのものを抜本的に検討する、金融政策全体あるいは金融制度全体の中で再検討するべき時期に来ておると思いますが、そのようなお考えはないでしょうか。
渡辺国務大臣 現実の問題として郵貯の資金量が国全体の資金量の三分の一近くまで来ておるということになりますと、いろいろな金融政策をやる上において全然金利政策等の足並みがそろわないということはいろいろな不都合が生じてくるわけでありまして、ここのところは何とか統一的な金利政策というものが機敏にできるようにならないものか、こういうふうなこと等について、国会の皆さん方のお知恵も拝借して今後とも十分に新しい立場で検討していく必要がある、こう思っております。
与謝野委員 どうもありがとうございました。

以上

小泉純一郎氏がいつ「郵政改革」を考え出したのかは判らない。
郵政省は全国の特定郵便局(2万以上存在した)の政治力をバックにしていた。各議員は地元の特定局長の応援がもらいたく、「局長会」や「郵政省」の代弁を務めていた人が多かった。局長という存在は地方に行くと「名士」であって、この人達の選挙での推薦は当落に繋がるものであった。また局長の夫人達はグループを作り、選挙の際は電話掛け等のボランティアも進んでやっておられた。
選挙をやる人間にとって「郵政」には向かう事はとても危険なことであり、党の中の人達は「郵政改革」など考えもしなかったのである。加えて、角栄さん亡き後の党の最大の実力者である金丸信氏がトップに座って党内で応援団を作っていた。地元でにらまれ、党内でにらまれるような事は誰も手を出さなかったのである。ですから小泉純一郎氏はそれを言いだすのは相当の勇気と覚悟が必要だったと思う。自民党の会議で、しばしば「郵政」批判をやっておられたが、役人達の答弁はかなり冷ややかなものであった。

二年生になってしばらくして、新宿区長の山本克忠氏が訪ねて来られた。信じられない事であるが、1時間50ミリの雨が降ると神田川は溢れ、高田馬場や落合の一部では川から水が溢れる。
また下水管を逆流した雨水は中野区の商店街のマンホールから突然噴きだしたり、西神田でも水が出るという都市河川の問題がしばしば現れていた。解決方法は何処かに遊水地を作るか、地下に素晴らしく大きい貯水タンクを作るかであった。都市部で川幅を大きくする事は不可能であった。
山本氏は新宿落合の外れにある大きなオリエンタル写真という会社が、そこの会社の土地を売却して別の場所に移る計画がある。
「それならば、その土地を購入したらいかがですか」と申し上げると、区長は答えて曰く「もう売却の契約が済んでしまっている」と言われる。それでもその土地が欲しいと言われ、私に何とかして欲しいと言われる。民間の結んだ契約を後から口を出すのは無理ではないかと思った。でも力の限り努力しようと考えた。銀行は三井銀行、ここには大蔵大臣の渡辺美智雄先生から話をして頂き、また東京電力の那須社長からもメインバンクの三井に話をして頂いた。
オリエンタル写真は名門の会社で「印画紙」の分野では素晴らしい会社であった。細かい経緯はともかくとして、オリエンタルは社会の為、公益の為なら公に売却しましょうと結論を出して下さった。買主は住宅公団で住宅の下部は池になることになった。
それ以来新宿の洪水はなくなった。一時的な大雨はこの大きな池で一時的に貯水が出来るようになった。

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